穂高槍縦走
日付 2009年8月7日(金) - 2009年8月9日(日)
山域 北アルプス
メンバー 単独
山行形態 前夜発2泊3日小屋泊
アクセス 電車、バス
ルート (Map)
1日目:中の湯→新中の湯ルート→焼岳→西穂山荘
2日目:西穂山荘→西穂高岳→奥穂高岳→北穂高岳→南岳小屋
3日目:南岳小屋→槍ヶ岳→槍平小屋→新穂高温泉
1日目】【2日目】【3日目

2日目
3:42 西穂山荘を出発する。
出発は4:30で良いと思っていたが、周りの人が起き出すのでつられて起きてしまった。
当然辺りは闇なので、ヘッドライトをつけて歩き出す。

4:27 先行者何名かを追い抜き、西穂高岳独標に到着する。
この時間にこの辺りをうろうろしている人は、皆奥穂をめざすのだろう。

かつて訪れたことのある西穂独標、そしてそこから望んだピラミッドピークと西穂高岳。
それを再び望んだ後で、かつて行けなかった西穂へ歩を進めたかったのだが、
どうも今日は天気が良くなく、辺りはモヤに包まれている。

ヘッドライト無しで歩ける程度に明るくなるのを待って、西穂高岳に向かう。

あっという間にピラミッドピークに到着。
西穂独標からの下りが難しかったが、それ以外はほとんど難所無しだ。

登山道では鎖が設置されている場所がある。
昔の落雷事故以来鎖は全て撤去されたと聞いたことがあるが、
再び設置されたのだろうか?

たまに雲が消えて僅かに視界が開けるときがある。
しかし見える景色は限定的だ。

西穂独標から西穂までは、なかなかの岩尾根。
ここはもう穂高岳の一角だ。

小さな小さなピークをいくつも越えていく。
西穂山頂までの間に13のピークが連なるらしい。

5:23 西穂高岳山頂到着。標高2909m。
穂高山頂の一角を踏むのはこれが初めてだ。

相変わらず天気が悪く、山頂からはほとんど展望がない。

上空には青空が広がっているのだが…

ここから先は上級者ルート。意を決して一歩を踏み出す。
視界がないため、この先の荒々しい岩稜はほとんど望めない。

道端にコケモモの花が咲いている。可愛らしい花だ。
秋には赤い実をつける。

チングルマの花はもう終わっていて、既に実がなっている。

シコタンソウ。小さくて可憐な花を咲かせる。
岩稜縦走とはいえ、意外にあちらこちらで高山植物が見られる。

間ノ岳に到着。ペースは順調だ。
ここまででも、なかなかに際どい鎖場がいくつかあった。

間ノ岳からの下りも長い鎖場。この天気で基本的に岩は濡れている。

ヨツバシオガマが咲いている。どこにでもある、おなじみの花だ。

間天のコルからは、有名な天狗の逆層スラブだ。
スラブとはでこぼこが少なく傾斜の緩い岩のことを指す。
逆層のため手足をかける場所は少なく、濡れて岩が滑ると不利なところだ。

逆層スラブを登りきると天狗岳山頂に到着する。
ここで奥穂からの単独登山者とすれ違う。先行者は1名との事だ。

ここから先も岩場は連なる。
この岩屑の尾根のどこに登山道がついているのやら…

天狗岳直下からは岳沢ヒュッテに直接下りられるルートが存在する。
(ヒュッテはもう存在しないが…)
もっともこのルートも難ルートなので、エスケープルートとしてはあまり有効でない。

もし晴れていれば目の前にどのような景色が広がったのだろうかと思わずにはいられない。
やはりこのルートはリベンジの必要がありそうだ。

目の前には無機質な岩がただただ連なるのみ。
この辺りで2人組みの登山者とすれ違う。
先行者はかなり岩馴れしているっぽい単独女性らしく、自分との距離は広がってそうだ。

目の前に突然、大きな岩塊が現れる。
一目でそれと分かる、ジャンダルムだ。

ジャンダルム基部には大きな雪の塊が残っている。

岩に刻まれた「ジャン」を示す文字。
西穂・奥穂間の象徴的存在であるこのピークだが、
基部からこのピークに登ること自体はさほど難しくない。

8:32 ジャンダルム山頂到着。標高3163m。
この山の存在を知ったのはいつだっただろう…
本当に長い間あこがれていた山頂に今ようやく立てた。

そして、眼前に飛び込んできた景色に腰を抜かす。
本コース最大の難所・ロバの耳だ。本当にこんなところ人間が歩けるのか?
奥に見え隠れしているのはめざす奥穂高岳だ。

ジャンダルム山頂は少々狭いが、一人だと十分なスペースだ。
槍ヶ岳山頂程度の広さだろうか。

今まで歩いてきた方向を振り返る。
西穂も含めて雲に覆われていて、ほとんど何も見えない。

下の方は360度雲で展望はあまりなし。
しかし完全なホワイトアウトではなく、これだけ視界があれば、まあ上出来だ。

奥穂高岳の左手には赤い屋根の穂高岳山荘がはっきりと見える。
中央に見える山は涸沢岳だ。

奥穂高岳もだいぶはっきりと見えてきた。
山頂付近にたむろする登山者の姿もはっきりと見えるし、賑やかな声も聞こえてくる。
おそらく向こうからもこちらの姿が見えていることだろう。

そして、岩壁の中に先行者の姿を捉える。
しかしこの人は、本当にルート上を歩いているのか?
付近にルートらしいものは全く見当たらないが…

再び辺りは雲に覆われてきたので、20分ほどの滞頂でジャンダルムを後にする。
一旦西穂側に下った後、ジャンダルム基部をトラバースする。

雲の中にジャンダルムが煙突のように不気味に聳えている。

ここから難所のロバの耳。岩だらけのとんでもないルートだ。

錆びた標識が放置されている。
こんな場所で一体何が書かれていたのか…?

足元を見ると、なんとクモマグサが咲いている。
会ってみたかった花だけに、こんなところで出会えるとはびっくりだ。

頭上を見上げると岩が覆い被さってきそうだ。
どうやったらこんな地形が出来上がるのだろう?

難所・ロバの耳を通過すると最後の難所「ウマノセ」だ。

両側が切れ落ちていて、馬の背のように細い稜線ということらしい。
高度感に強い人ならさしたる緊張もなしに通過できる。
難所という感じもしないが、風が強いと辛いかもしれない。

9:25 奥穂高岳山頂到着。標高3190m。
本邦第3位の高峰だ。
ついに西穂から奥穂間の縦走に成功する。

山頂付近は大勢の登山者であふれている。
右手に見える社が建つ大ケルンは、標高で3m負けている北岳を抜くために造られたとか。
あの上に登ると北岳よりも高い位置に立てるそうだ。
まあ富士山から見るとどんぐりの背比べだが…

待つ事しばしで、雲の中からジャンダルムが姿を現す。
見事というしかない、迫力のある姿だ。
山頂には後続者2名の姿が見える。
周りの登山者は羨望のまなざしでジャンダルム山頂を見つめている。

10:07 のんびり休憩したので、山頂を出発することにする。
まだこの時間なので行動を打ち切るには早すぎる。
北穂まで行ってからどうするかを考えることにする。
ここから穂高岳山荘まで続く道はアリの行列のように人が続いている。

何の目的か、ネットが張られている。
落石防止にしては目が荒すぎるので、道迷い防止のためなのだろうか?

眼下に巨大な穂高岳山荘が見えてきた。

が、ここからが大変。最後の岩場が大渋滞で、大いに待たされる。
上りルートと下りルートが分けられていないので、始末に負えない。

ここの難易度は槍の穂先程度だろうか。
岩馴れしていない登山者が多い。

10:35 穂高岳山荘到着。
大勢の登山者がのんびりと食事をとっている。
今日の行動はもうおしまいなのだろうか?

小屋を後にして、涸沢岳の登りに取り付く。
背後に穂高岳小屋と奥穂高岳が望める。

10:50 涸沢岳山頂到着。標高3110m。
目立たない穂高の一角の3000m峰だ。

奥穂から北穂間は案外難しいルートだ。
登山者の数はぐっと少なくなる。

岩岩岩の縦走路。さすがは穂高岳だ。

右手には見事なカール地形、涸沢カールが広がる。
左手の方に小さく涸沢小屋が見えている。
その奥に連なるのは穂高一美しいといわれる前穂高北尾根。
この尾根は岩登りバリエーションルートの入門だ。

目の前に北穂高岳が迫ってくる。
この山もあきれるくらい岩の塊で出来上がっている。

北穂高岳への登りにとりつく。
最低コルから、それなりの標高差を登る必要がある。

涸沢からの道と合流し、最後の登りだ。
北穂高岳はいくつかのピークが連なるが、登山道は北峰に伸びている。

覆い被さるような岩が聳えている。

12:09 北穂高岳山頂到着。標高3106m。

目の前に広がる北穂高岳南峰。凄まじい姿だ。

そして北には見事に切れ落ちた大キレットが続いている。
北アルプス屈指の難ルートであり名ルートだ。
時間はまだ12時、疲労感も(あまり)ない。
この景色を見たら行かないわけにはいかないだろう。

めざすのは目の前に見える南岳山頂付近の南岳小屋だ。
南岳小屋は視界に入っているが、その奥にあるはずの槍は見えそうで見えない。

12:22 北穂高岳山頂直下に建つ小屋をかすめて縦走路に向かう。
「槍へ」の標識がなかなか良い。

大キレットの最低鞍部は2737m。そこまでどんどん下っていく。
最初の方にある鎖場は浮石だらけで、下に登山者がいたので神経を使う。

両側が切れ落ちたやせ尾根が続く。気分は爽快だ。

そして最低鞍部から一気に3000m峰の南岳までルートは突き上げている。

鎖は要所要所に付けられているので、比較的安心して歩ける。

展望も次第によくなってきて、遠くの方の山も姿を現してくる。

所々で登山者とすれ違う。槍からの縦走者だろうか?
中には震えている人もいたが、概ね皆岩馴れした登山者だ。

西側は滝谷と呼ばれる絶壁が広がっている。
穂高屈指の名所で、多くの登山者を死に追いやった難ルートだ。

足元に目をやるとイワオウギの花が咲いている。
マメ科の植物だ。

鎖、梯子を使って絶壁を攀じ登る。

不思議な形の岩。叩いたら転げ落ちそうだ。

岩場のルートにはイワツメクサがたくさん咲いている。

南岳への最後の登りに入っていく。
この辺りで2人組みの登山者とすれ違う。足が速そうなのにこの時間にこの場所というのが不思議で
どこから来たのか尋ねると、なんと新穂高温泉から槍経由で来て、これから北穂に向かうらしい。
たまに単独行のおっさんで信じられないような人はいるが、若い男女とは珍しい。
上には上がいるものだ。

難所終了、小屋まであと10分の標識。
逆にいうと小屋まであと10分の距離まで難所が続いたということだ。

南岳小屋が見えてきた。

14:16 南岳小屋到着。標高3000m。
何やら槍まで行けそうな勢いだが、わざわざ混雑する槍ヶ岳山荘に行くメリットもないので、
本日はここまでとする。岩の上ばかりを歩いた1日だった。
今回の山行は難ルートということで、小屋泊小屋食(夕食のみ)。
火器すら持って来ていないので、荷物が軽いといかに楽かということがよく分かった。

時間が早いので、小屋の前でのんびりと過ごす。
夕方になると雨が降ってきた。

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