南ア深南部縦走
日付 2009年5月1日(金) - 2009年5月5日(火)
山域 南アルプス
メンバー 単独
山行形態 4泊5日テント・無人小屋泊
アクセス 電車、バス
ルート (Map)
1日目:寸又峡温泉→前黒法師岳→ヘリポート
2日目:ヘリポート→黒法師岳→丸盆岳→鹿ノ平→不動岳往復→六呂場山→六呂場峠
3日目:六呂場峠→黒沢山→中ノ尾根山→鶏冠山南峰
4日目:鶏冠山南峰→池口岳→光岳→光小屋
5日目:光小屋→易老岳→易老渡→上島
1日目】【2日目】【3日目】【4日目】【5日目

4日目
5:41に鶏冠山南峰を出発。標高は2000mを越え、昨夜は少し寒かった。
目の前に美しい双耳峰の池口岳が望める。

鶏冠山南峰からの下りは急斜面で、凍りついている場所もあり極めて危険だ。
下りきったところにトサカ岩が現れる。形が鶏冠に似ているから名付けられたのだろう。

トサカ岩から一登りで鶏冠山北峰に到着する。
南峰と同じく立派な標識が掛けられている。最近造られたものだろうか?

鶏冠山からの下りは尾根というよりもただの斜面で、どこがルートか良く分からない。
この斜面も一面雪に覆われている。
昨日は笹藪に苦しめられたが、今日の行程はルート上はさほど困難な場所は無い。
しかし、だんだんと雪が深くなってくるので、今日は雪との格闘になりそうだ。

適当に斜面を下っていると、尾根からはずいぶん離れたところに下ってしまった。
コンパスを見ながら下るべきだった。この辺りには水場があるらしいので、
沢に下ってしまったついでに付近を捜してみたが見当たらない。
仕方が無いので稜線に戻ることにする。

稜線に登ると目の前に池口岳が現れる。
間近に迫るとさすがに迫力がある。

笹原が終わり、付近は次第に樹木に覆われてくる。
右側から水の音が聞こえてくる。

稜線から5分も下ると水量豊富な水場がある。非常に便利な水場だ。
沢ではまだあちらこちらで残雪が見られる。もう少し雪が多かったら水を汲めないところだった。

稜線に登り、針葉樹林帯の中を登っていく。

辺りは苔生した世界が広がっている。

斜面はどんどん急になり、悪いことに地面が凍りついている。
氷の無い部分を選びながら、木につかまって登っていく。

振り返ると、鶏冠山から中ノ尾根山までの稜線が望める。
今日は朝からあまり天気が良くない。

池口岳南峰への登りから、北峰を望む。鋭角の立派な山容だ。
なかなかの急斜面で登るのに苦労しそうだ。

池口岳南峰直下に到着する。目の前にはこれから向かう加加森山が望める。

9:14 池口岳南峰到着。標高2375m。
池口岳は南ア深南部の中では人気の山で訪れる人は数多いが、
ほとんどの人は北峰にしか登らず、こちらに足を伸ばす人は少ない。

南峰を下り、北峰への急斜面を登っていく。
雲に覆われ、辺りは真白になってしまう。

10:19 一登りで池口岳北峰到着。標高2392m。
北峰の方が少しだけ背が高い。南峰と同じで北峰も展望は開けない。

この辺り一帯は原生自然環境保全地域に指定されている。
これに指定されているのは、知床、十勝川源流部、硫黄島、屋久島と、
ここ大井川源流部の5箇所で、本州で指定されているのはここのみだ。
日本に残る自然の中でも稀有の存在であることが良くわかる。

池口岳から西尾根に下るルートはいくつかの足跡がついている。
さすがにこの山に登っている人は何人かいるようだ。

池口岳から加加森山に続く尾根に入る部分は、地形図を見る限りでは分かりにくい。
天気が悪いので見通しが利かず、道も雪に覆われているので、細心の注意を払い下っていくと、
加加森山に続いていそうな尾根が右手に伸びている。

その尾根に入っていこうとすると何の事は無い、ちゃんと標識が用意されている。

光岳・池口岳間はもはや一般ルートと言ってもよい。
道標の他に水場下降点の標識も用意されている。

水場下降点から下を見ても全て雪に覆われている。
もはや水場で取水することは不可能だ。もっとも雪を溶かせばいくらでも水は手に入るが。

丸くて鈍い形をした加加森山だが、そこに続く尾根は意外にやせ尾根だ。

稜線は雪があったり無かったり。やせ尾根だけに雪があると歩きにくい。

展望が開けたところに出てくる。目の前に見えるはずの加加森山は雲の中だ。

この辺りは尾根が広がり、庭園のような風景だ。天気が良ければさぞ綺麗だろう。
この辺りで鶏をカラフルにしたような鳥を見かける。
走って逃げていったので写真を撮れなかったがキジのようだ。

鳥と出会った後程なく、ツキノワグマと遭遇。距離は5m程度。
驚いたクマは大慌てで急な斜面を転がりながら逃げていく。
転がる様にではなく、本当に転がっては走り、走っては転がっていた。
よっぽど驚いたのだろう。初めて野生のツキノワグマに出会えた。
クマは怖い動物かもしれないが、実際はスズメバチに殺される登山者の方が多い。

尾根は少しずつ広くなってきて、辺りは倒木だらけになってくる。
小さな木ばかりなので歩くのにさほど支障はない。

加加森山に近づくにつれて、一面雪に覆われてくる。
この辺りは大倒木帯と呼ばれるところのはずなのだが、倒木は全く見当たらない。
雪の下に埋もれてしまっているのだろうか?

13:11 加加森山山頂到着。標高2419m。
鬱蒼とした森に覆われた静かなピークだ。

左手には雲に覆われた南アルプスの主稜線が見える。
もう少し雲が取れてくれればいい眺めなのだが…

目の前にはめざす光岳が大きく聳える。山名の由来になった光石が見えている。
光岳は南アルプス最南端の山だ。南アの主要ピークからは大きく離れ、標高は低く、目立たない山で
登るのが面倒くさい山だと言われている。
光岳の良さは南ア深南部を知る者のみが知っている。

加加森山から光岳までの登りは、信じられないような急斜面になる。
まるで垂直の壁を登っているような気分だが、横を見ると傾斜は45度前後だ。
雪が太郎山のときのように柔らかければとても登れない。
逆にアイスバーンになっていたら、アイゼンとピッケルが無いと歯が立たない。
雪の状態は、雪面を蹴れば足先は埋まるが、踏みこんでも体は沈まない、ちょうど良い状態だ。

下を振り返ると、急な斜面が下方に続いている。
滑り落ちたらすぐに止められるかどうか微妙なところだ。

池口岳から光岳の間は足跡が全く無いので、最近歩いた人はいないのだろう。
傾斜が急すぎるので登山道は別についているのかと思っていたら赤テープが見つかる。
登山道はジグザグに付けられているのだろうか?

急斜面を突破すると後もう少しで山頂だ。左手には雪庇が見える。

目の前に大きな光石が望める。南方から見ると非常に良く目立つ、白くてきれいな岩だ。

さらに登ると、展望台がある。と同時に、多くの踏み跡を発見する。
もはや完全に雲に覆われてしまって展望は0だ。

16:45 光岳山頂到着。標高2591m。
ついに光岳山頂に達した。ここまで来れるとは正直思っていなかったが、最終目的地に到達だ。

樹林に囲まれた山頂は、人の足跡はたくさんあるが、誰もおらずひっそりとしている。

光岳からすぐ近くの光小屋まで向かう。
足跡はたくさんついているので楽々歩ける。

16:55 光小屋到着。標高2500m。
本当に久しぶりに見る人工建造物だ。

小屋の入口は雪に覆われていても入れるように、考えられた設計になっている。

ここの入口はオフシーズン中のみの出入口のようだ。

恐る恐る扉を開けてみると鍵はかかっておらず、冬季無料開放中のようだ。
中は誰もおらずひっそりとしている。夏の喧騒を想像しながら一人小屋に佇む。
ついに今日は一人の人間も見かけなかった。

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